アレックス・カー著「犬と鬼」を読んで

この本のタイトル「犬と鬼」は、中国の古典「韓非子」に出てくる故事である。
皇帝が宮廷画家にこう問うた。
「描きやすいものは何であるか、また描きにくいものは何であるか」。
すると画家はこう答えた。
「犬は描きにくく、鬼は描きやすい」と。
つまり、私たちのすぐ身近にある、
犬のようなおとなしく控えめな存在は、正確にとらえることが難しい。
しかし、派手で大げさな想像物である鬼は、誰にだって描けるものだ。
現代の諸問題の基本的な解決は地味なだけに難しい。
ところが派手なモニュメントにお金をつぎ込むことは簡単なのだ。…

…ヨーロッパでは自然と史跡の美しさの保存は観光客を喜ばすために起こったのではない。
それは、コミュニティーを守ろうとする、
昔からある市民意識から生じ、観光はその副産物であった。…(本文より借用)

著者アレックス・カーは、日本の再生のヒントは「伝統文化」を
もっと大事にすることにあるのではないかと言う。
観光客、他人にどうしてほしいと考える前に、まずは自分たち自身のこと、
自分たちの足元をきちんと見つめなおすことから始めなければ、
本当のことは見えてこないということだろう。
そうでなければ、ウソごとがただ上滑りしていくだけである。

イベントごとも慣れてくると、枝葉末節ばかりの議論になりやすい。
本当に必要なことは、なぜこのイベントを実施しようとするのか、
その目的、コンセプトに向かって力を結集することである。

イベントの在り方が、今こそ問われていると感じる。

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